電車にて(無職、面接に行く)
まずオチから申し上げますと、電話にて謝罪し経緯をお伝えました所、許して頂けました。
「無職は時間に縛られねえ。俺が起きた時が朝だ。」とはどこぞのアニメの主人公が発した名言ですが、無職にも時間に縛られる時がある。
例えば、今日のような面接の日。
昼頃に面接ということで、いつもより3時間早く起きた。
朝食を食べ、シャワーを浴び、身だしなみを整える。
そして予定を確認し、十分間に合う様に家を出る。
駅に着き、電車を待つ。
すると、下腹部に微かな違和感。
その違和感は徐々に大きくなり、腹痛となって私を襲い始めた。
何故、よりによっていま来るのか。
これから乗る電車は快速。おそらくトイレはある。
しかし、もし使用中だったら?中々出てこなかったら?
高速で思考が駆け巡る。が、それ以上の速度で成長する腹痛。
いや、まだ時間に余裕はある。地方ゆえに電車の数は多くはないが、次の電車でも十分間に合う……!
私はトイレに走った。
トイレは汚かった。
「ケツを掘らせろ」
そんな素敵な落書きがあった。
失われていく水分を冷えた水で補いつつ、待つこと15分。電車が来た。
この各駅停車で目的地まで向かうと時間的にかなり危うい。
なので、この電車で次の快速に追い抜かれないギリギリの駅で降り、後から来る快速に乗り換える。
こうすることで、余裕を持って会場入りすることが可能になるのだ。
何故駅で待たないか。何故ギリギリで乗り換えるか。それは、駅で待つと暑いからだ。
車内は人が少なく、快適であった。
文庫本を開き、悠々自適な電車旅。
しかしその10分後、再び下腹部に微かな違和感。
いや、まさか。さっきトイレに行ったばかりじゃないか!!
そんな考えとは裏腹に急成長を遂げる腹痛。マジで出てくる5秒前。
冷や汗が止まらない。
待て、よく考えろ。この電車にもトイレは付いているはずだ。車内を早歩きで疾走。
しかし、トイレには既に人が……!
その時、電車のアナウンス。停車の知らせ。しめた!
だが、そこは無人駅。もちろん、トイレは、無い。
どうする?ここで降りるべきか?
しかしどう見ても駅の周囲にトイレは無い。
もしかしたら、車内のトイレからすぐ人が出てくるかもしれない。そうに違いない!それに腹痛も少しマシになってきた。
""続行""だッッ!!
そして電車は動き出す。腹痛も急激に悪化する。トイレにはまだ人が篭ったまま。
何がいけなかったのか。今朝飲んだ牛乳か?それとも久々に食べたバナナか?昨晩揚げ物を食べたのがダメだったか?いや、さっき飲んだ冷たい水か??
というかこのトイレに籠もってるヤツ長すぎだろ!狭くて臭くて汚いからって自室と勘違いしてんのか???
もしかしたらガスかもよ?出せば、楽になるぜ?大丈夫、グレーゾーンだが「物」を車内に出すよりはるかにマシさ。
そんな悪魔の囁きまでが聞こえ始めた。
だがどう考えてもガスではない!私はより一層気と肛門を引き締めた。
しかし、事態は一向に好転する気配を見せなかった。
決壊は目前であった。
ああもうダメだ……おしまいだ……お父さんお母さん、こんな親不孝者でごめんなさい……私はここで星になります。
諦めかけたその時、救いの声が車内にこだまする。
「次は***〜***〜。お出口は左側です」
この駅はッ!快速こそ止まらないがそこそこに大きい駅だッ!!
ここが正念場だ!頑張れ肛門!気張れ!!(西郷どん)
開くドア
走る無職
平成最後の、夏
トイレはそれはそれは汚かった。
それでも、その時の私にはこれ以上の場所なんて存在しなかったのだ……。
しかし、元々一本遅らせて乗っていた電車。
快速が止まらない駅。
地方特有の列車の本数。
刻一刻と迫る面接の時間。
その意味に気がつきスマホに手を伸ばすまで、残り3分……!